OVOLシンガポール(OVOL Singapore Pte. Ltd.)は、2019年7月、紙パルプ専門商社である日本紙パルプ商事株式会社の東南アジアにおける営業基盤の強化、取扱商品の拡充、顧客サービスの向上を目的として、シンガポールにて紙卸売事業を展開する既存基盤であったJPP Far East Pte Ltdと2018年12月に買収した同業のSpicers Singapore Pte Ltdが統合して設立された。
同社は倉庫、加工機を保有しており、印刷用紙、コピー用紙、ステッカーや広告素材の輸入販売のほか、断裁や加工も可能なシンガポール最大の紙・板紙卸売企業だ。
そんなOVOLシンガポールは、船積書類のデータ入力業務効率化の目的で2020年にAI- OCR「AIRead」とRPAツール「WinActor」を導入した(※ニュースリリースはこちら)。その後、同社では「WinActor」を活用し更なる業務の自動化を進めているという。 同社が進める自動化の内容とその効果について、OVOLシンガポール Chief Strategy Officer & Chief Business Officer 新井 翔太 氏、Chief Information Officer Phang Sian Chin氏にお話を伺った。
OVOLシンガポールでは、受注、仕入、請求など日々さまざまな事務処理業務を行っている。
「AIRead」と「WinActor」を導入した船積書類のERPへの入力業務は、作業負荷が大きい業務のひとつだ。導入にあたっては、アライズイノベーションが日本からリモートで、NTTアドバンステクノロジのシンガポール支社が現地でサポートをしながらトレーニングを実施した。トレーニングを終えてPhang氏は「WinActor」について、このソフトウェアは他の業務にも活用できるのではないか?との印象をもったそうだ。
そこでまずPhang氏は、船積書類を読み取ったCSVファイルをERPへ自動入力するシナリオと英語のマニュアルを参考に、自ら行っている簡単な他の業務のシナリオを作成してみた。比較的簡単に、これまでの作業を自動化することができたという。「WinActor」自体はGUIで直感的に使用することができたので、シナリオの作成で戸惑うことはなかったそうだ。
Phang氏は、これまで22業務で「WinActor」のシナリオを作成している(2022年5月現在)。例えば、同社では毎日40~50件程度の請求書を発行している。これまでは、カスタマーサポートの担当者がERPから1件ずつ該当の顧客データを検索し、請求書をPDFに出力、メールに添付して送付していた。これを、請求書を発行したい発注番号を記載したCSVファイルを用意するだけで、請求書の発行業務を自動化することに成功している。
これにより、月間20時間以上の作業時間を削減するとともに、請求書の確認作業も1名で行うことができるようになったという。
また、管理者への営業日報・月報作成業務についても自動化と改善をしている。これまでは、ERPから手動でデータを抽出し、Excelで加工・印刷した報告書をそれぞれの管理者の机上に置いていくという運用をおこなっていた。これが、コロナ禍によるテレワークにより、紙での報告書では運用困難になったため、加工したデータをメールで送付するように変更した。
このデータの作成処理を「WinActor」を使い自動化した。また、報告書が紙からデータ化されたことで、持ち運びが容易となり、モバイル端末からのアクセスも向上したという。
これまで紙での報告書の提出が当たり前になっていたので、このようなきっかけが無ければ改善はされなかったかも知れない。
また、同社が年に1度行う棚卸し作業でも、大きな効果が得られたという。
棚卸し作業は、システム上の在庫数と実際の倉庫にある現物が合っているかを確認する作業だが、同社では2日程度かけて全社員が参加し行っているという。この作業では、倉庫で現物を数える担当者とシステム上の在庫数を確認する担当者とに分かれて行うが、システムから再確認表を作成する作業を「WinActor」で自動化した。倉庫の担当者が確認したい商品番号を指定するだけで、「WinActor」が自動的にシステムの検索から印刷までを行うことができるとのことだ。
「システム操作中は担当者の待ち時間が長かったが、待ち時間が短縮されたことで社員の負担も軽減され、非常に好評でした」(新井氏)。
「WinActor」の導入はコロナ禍によりリモートワーク中での作業であったため、業務担当者と直接会話することができず苦労したことが多かったとのことだった。
導入にあたって、まずPhang氏は各業務担当者へRPAの概念を説明し、自動化できそうな業務が無いかをヒアリングしたそうだ。だが、Web会議ではなかなかRPAを伝えることができなかったという。また、担当者から上がってきた自動化希望の業務についても、Phang氏が理解するにはやはりWeb会議だけでは難しかったそうだ。そのような状況ではあったが、出来るだけシンプルな業務を選択し実装していくことで、少しずつ利用の範囲を広げていくことができたという。
Phang氏は「WinActor」の情報について、提供されている英語のマニュアルのほかにNTTアドバンステクノロジ社の英語版Webサイトから情報を収集しシナリオの作成を行ったという。ただ、「日本語のサイトをみると、英語よりたくさんの情報が載っているように見えます。残念ながら何が書いてあるかわからないので、英語版のWebサイトも日本語並みに充実してくれると嬉しいです」(Phang氏)とのことだった。
またPhang氏はExcelを操作する処理のシナリオを多数作成しているが、「WinActor」の基本ライブラリにない操作機能については、自らライブラリを追加し開発したという。
「日本語で公開されているプチライブラリも、英語版での公開を願います」(Phang氏)。
新井氏からは「現在はシンガポールでの利用ですが、マレーシアでも同じERPを使用しているため、今後は利用の範囲を広げていきたいと考えています」とのこと。また、「他の海外のグループ会社(アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、インド、香港)も、システムは違うが業態は同じなので、活用することでの効果は出せると考えます。OVOLシンガポールが、海外グループ会社のDX、業務効率化をけん引できる立場になりたいと思っています」(新井氏)とのことだった。
会社名 OVOL Singapore Pte. Ltd.
所在地 2 Corporation Road, #01-10 Corporation Place, Singapore 618494